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米国「企業改革法(サーベンス・オクスリー法)」案成立と日本企業への影響について

7月25日に米国上院と下院で可決された企業改革に関するサーベンス・オクスリー法が、30日ブッシュ大統領によって署名され、近日中に発効されることとなりました。ジェイ・ユーラス・アイアール(株)では、この法案が日本企業のIR活動に与える影響について整理いたしました。

ブッシュ大統領は7月30日に法案に署名しましたが、両院で可決される前にすでに署名することを表明していました。これは、企業の不正会計に対する大統領の強い怒りと米国経済の急速な失速に歯止めをかけようとする意気込みを反映しているものと思われます。なお、参考までに、当法案に対する米国議会の投票結果は、上院では賛成99票、反対0票、下院では賛成423票、反対3票ということで、圧倒的多数で可決されました。一部の賛成票を投じた議員の中でも当法案のあまりに厳しい内容に懸念を示す者もいましたが、企業犯罪に対する怒りが高まっている世論の中で、実際に反対票を投じるのは困難だったという状況であったようです。

この法案は、米国企業だけでなく米国市場に上場する海外企業についても、米国企業同様、SECに提出する財務諸表に対して、CEO(最高経営責任者)とCFO(財務担当責任者、日本では財務担当取締役に相当)が、その正確さを保証する証明書を提出することを要求しています(*)。組織ではなく経営トップという個人を特定して、責任の所在を明確にし、企業改革の実効性をあげようという、米国特有の合理的・実践的なやり方といえるでしょう。

その結果、ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場している日本企業もこの法案の影響を受けることになります。また監査法人に関する項目では、米国にある海外監査法人も規制の対象になります。EUを筆頭に諸外国は、それに反対するロビー活動を展開しようとしましたが、あまりにも早く法案が可決されたために阻止できなかった、と報道されています。日本公認会計士協会では、「日本に対する主権侵害」という抗議文を提出しました。

今後米国投資家は、この法案にもとづく視点で企業の分析を行うことになります。よって、弊社では、米国市場に上場しているか否かに関わらず、米国でIR活動を展開している日本企業も十分な注意が必要だと考えます。今後、米国企業や米国に上場している日本をはじめ諸外国の企業の経営陣が、その財務報告書の正しさを保証するようになっていくと、それを免れている日本企業に対する見方が、相対的に厳しくなる可能性があります。

(*)なお、当法案をもとに具体的なルールを設置し実行させる役目はSECが負っていますが、外国企業を対象にするか否かについては近日中に決定をするようです。ニューヨーク証券取引所やNASDAQは、対象外とするよう働きかけている模様です。

日本企業のIR活動-何が期待されるようになるか

企業の経営陣は、企業会計に対する誠実さをこれまで以上に示さなければならないと同時に、自社の会計・財務内容について熟知しなければならなくなるでしょう。SECの判定を待つまでもなく、今後海外の投資家に対するIR活動では、一層の情報開示が求められることになるのではないでしょうか。

米国で上場している企業や上場予定の企業は特に注意が必要です。なかでも、複雑な連結子会社を持つ企業の会計に関しては、細心な注意が必要となるでしょう。弊社では、この法案が実際に外国企業にも適応された場合は、日本企業の米国市場に上場するコストが従来より高まると予想しています。

また、この法案の成立のきっかけとなったエンロンに始まる一連の事件を通して、企業はコーポレートガバナンスに対する姿勢を益々問われることになっています。日本では2003年の商法改正でいわゆる「米国型統治形態」を選択することができるようになりますが、実際にすぐこの形態に移行する日本企業はまだ少ないと言われています。また、日本の企業組織の現状を考えると、十分に議論されずに米国型統治形態へ移行することは、本来の目的である企業経営の透明化という主旨からはずれてしまう恐れもあります。

日本企業のIR活動を支援するジェイ・ユーラス・アイアール㈱では、米国型統治形態への移行の前に、日本企業の中から自発的にコーポレートガバナンスの強化を目指すために、経営陣を主たるメンバーとする「IR・コーポレートガバナンス委員会」の設置を提案しています。この委員会の設置により、企業の内外に、ガバナンス体制やIR活動に対する企業の強いコミットメントを示すことができると考えます。

日本企業の経営陣は、企業経営の透明化への期待が大きく高まっている事実を認識しなければなりません。また、この期待に応える企業が、国際社会での真の「勝ち組」企業と言えるのではないでしょうか。

以上

(2002年8月1日)

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